2010年8月アーカイブ

小川家はスウェーデンの首都、ストックホルム中心地から地下鉄とバスを乗り継いで約1時間半ほどのところにあります。静かな住宅地が立ち並んでいる一角ですが、すぐそばには歩いて行くことができる大きな森があります。自然を大切にするスウェーデンの人々にとって森はとても大切な場所です。

8月のさわやかな暑さのある日、ちょうどブルーベリーのシーズンということでみんなで森へ散歩に行きました。歩いていると大きな木々の下に小さな木が群生している場所が所々あり、直径5ミリほどの小さな実をつけています。これがワイルドブルーベリーです。食べてみると甘酸っぱくて濃厚な味でおいしいんです。感動しました。7月から9月の初め頃まで収穫できるようです。みんな指を紫色に染めながら摘んでいます。摘むもう一つの楽しみはつまみ食い。子供たちの口の周りは紫色、だから食べたのがすぐ分かってしまいます。

スウェーデンの自然がくれた夏のおいしい贈りものですね。一年にこの時期しか採れない旬の恵み、ワイルドブルーベリーを使って子供たちの大好きなデザート作りをしました。

ブルーベリーの手作りデザート ~友子さんのレシピより~
玄米ブルーベリードリンク
簡単に作れるのはブルーベリードリンクです。
玄米ごはんをミキサーにかけてよく攪拌(かくはん)してから豆乳マルトを加えます。最後にブルーベリーを加えて出来上がり!のどごしがよくて飲みやすいおしゃれなドリンクです。
マルトとは小麦飴のことです。スウェーデンは寒い国なのでお米は採れません。その分小麦はたくさん採れる国なので、小川家では全ての甘味は小麦から採れるマルトを使います。その土地のものを使うのもマクロビオティックの考え方ですね。マルトは寒いと白く固まりますが溶かすと透明になります。なめるとすごーく甘い!

ブルーベリーパイ
sweden-vol1-blueberrypie.jpgパイ生地は挽きたて全粒粉なたね油で作ります。その上に玄米クリーム(玄米粉、豆乳、マルトで作ります)、溶かした寒天で煮たブルーベリーをのせてかためます。こんなに贅沢なパイは見たことがないというくらいぎっしりのブルーベリーを見たら、驚かない人はいないでしょう。できたパイと番茶を飲みながらみんなでFIKA(フィーカ)の時間です。FIKAとはスウェーデン語でお茶の時間のことです。スウェーデン人はお茶を飲みながら甘いケーキなどを食べる、そんな時間が好きなんですね。

わたしは、2008年8月から2009年6月までの約11ヶ月間、スウェーデンの首都ストックホルム郊外に住む日本人ファミリーと共に過ごしました。スウェーデンは北ヨーロッパに位置していて、「森と湖の国」と言われるほど自然の美しい国。また環境問題や福祉の先進国として、最近では日本でも話題の国ですよね。

わたしが今回スウェーデンに行くことになったのは、ある雑誌の「マクロビオティックを生活を通して学ぶ」という記事にひかれてのことでした。マクロビオティックとは日本の伝統食を基本にしたライフスタイルのことで、わたし自身も数年前から興味をもって、海外や国内の実践者のもとで、WWOOFなどを経験しながら学んでいました。

そもそもわたしが環境のことやオーガニックのことに興味を持ったのは約10年前、ハーブ園に勤めハーブや野菜の苗づくりなどをしていた頃です。同僚からマクロビオティックのことを聞き、以来本を読んだりたまに料理教室に通ったりしながら、そのエッセンスを自分なりに少しずつ生活に取り入れてきました。

もともと母の影響で花や野菜を育てることなどが好きだったわたしは、「手作りする暮らしをしたい!」と思い立ち、山梨や長野に移住。畑で野菜をつくりながら、心やさしい親方が営む小さなオーガニックナーセリーを手伝い、山々に囲まれたすばらしい環境の中でガーデニングやハーブのことを勉強するかたわら、地域のお母さんたちに保存食作りを教わりました。この時に梅干、たくあん、味噌作りなどを覚えました。「自分で作るものっておいしい!」「手作りって大事だなぁ」と改めて感じ、日本の伝統食の大切さを伝えること、そしてそのすばらしい知恵を残していきたいと思ったのです。

スウェーデンでわたしが滞在することになった小川家は、マクロビオティックを生活に取り入れて約20年の友子さんと、20歳から9歳までの(男の子3人と末っ子の女の子)4人の子どもたちが協力しあって生活しています。新しいことを常に取り入れ、どんなに忙しくても手作りすることをわすれない、エネルギッシュでたくましい女性、友子さん。そんな小川家の生活の中から生まれた料理はどれも本当においしいく、彼女のアイデアと愛情がいっぱいです。愛情というスパイスは何よりも大切なんですね。

そんな小川家で、わたしは平日の夜ご飯を担当。正直言って子供達が喜んでもらえるレシピを考えるのはとても大変でした。でもおかげで料理の腕もずいぶん上がりましたよ。メニューの中心となるのはわたしの考えたレシピや友子さんから教えてもらったスウェーデン流マクロビオティックレシピ。地元の旬な野菜をつかった日本人おなじみの和食メニューやスウェーデンのパーティ料理をマクロビオティック風にアレンジしたものなどなど。日々の小さな発見が山のようにあった小川家のキッチン、それにスウェーデンの季節料理や行事のこと、市場やオーガニックフード事情などなど、わたしが見聞きして感じたことを、月変わりのごはん日記とともにお届けします。どうぞお楽しみに!

プロフィール

くみこ
「手作りする暮らしをしたい!」「日本の伝統食の大切さを海外にも広めたい!」そんな思いから、国内外のマクロビオティック実践者やオーガニックファームを訪ね滞在しながら自分にあったライフスタイルを模索中。からだにやさしいごはん・おかし研究家。