2011年6月アーカイブ

 車では10分かかるところ、徒歩では7分で行く事ができる。家から一番近い八百屋までの所要時間である。最短距離で行こうとするならば首里のスージグァ(細い路地)を抜けて稍急な階段を上ることになり、車で行くには迂回しなければならない。そのため、徒歩で行くほうが早いのである。

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 本日(6月22日)は一年中で一番昼が長い日。二十四節気の第10番目「夏至」と言われている。沖縄ではすっかり梅雨も明け、太陽も夏に向ってまっしぐらの勢いだ。厳しい光線は日が落ちる直前まで続く。日中歩くことは、実はとても厄介なのだが、そんな日差しの中でもこの道のりは少し別である。


  地面は若干凸凹しているものの家々の庭先から伸びる樹木は、強い日差しを柔らかく分散させ水面の様な涼しげな木漏れ日を落としてくれる。

「こんにちは。暑いですね。」

 上り坂の途中、すれ違う人と軽い会釈を交わす。両手を伸ばしたくらいのスージグァは、人との距離を緩やかに縮めてくれる。坂の上へと続く階段横には小川が流れていて、周辺にはわき水が出ているカー(泉)が多い。この辺一帯は昔から水が豊富で、琉球王朝時代から紅型工房が軒を連ねているという。紅型(びんがた)とは、沖縄を代表する伝統的な染色のひとつで、首里は紅型発祥の地と言われている。

 額にうっすらと汗をかき、なんとか階段を上りきると八百屋はもう目の前だ。ふと振り返ると夏至の長い夕日が眼下の市街地にまっすぐに差し込んでいる。

 

〜こよみ散歩の小径(こみち)みやげ〜

夏至のころ、沖縄では慰霊の日を向かえる。その日没の時間帯、屋上の階段にまっすぐに差し込む夕日を見ることができる美術館。さらに階段を上ると眼下に広がる光景とは。

◇佐喜眞美術館 http://sakima.jp

長尾紀壽展 「型染 祀りから沖縄へ」

2011年
6月29日(水)~8月8日(月)


プロフィール

阪田清子(さかたきよこ)
1972年新潟県生まれ。1995年に沖縄へ移住。現代美術家。 暦を通じて日々の生活の中で出会う「人・場所・モノ」を緩やかに繋げて紹介していきたいと思っております。