車では10分かかるところ、徒歩では7分で行く事ができる。家から一番近い八百屋までの所要時間である。最短距離で行こうとするならば首里のスージグァ(細い路地)を抜けて稍急な階段を上ることになり、車で行くには迂回しなければならない。そのため、徒歩で行くほうが早いのである。

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 本日(6月22日)は一年中で一番昼が長い日。二十四節気の第10番目「夏至」と言われている。沖縄ではすっかり梅雨も明け、太陽も夏に向ってまっしぐらの勢いだ。厳しい光線は日が落ちる直前まで続く。日中歩くことは、実はとても厄介なのだが、そんな日差しの中でもこの道のりは少し別である。


  地面は若干凸凹しているものの家々の庭先から伸びる樹木は、強い日差しを柔らかく分散させ水面の様な涼しげな木漏れ日を落としてくれる。

「こんにちは。暑いですね。」

 上り坂の途中、すれ違う人と軽い会釈を交わす。両手を伸ばしたくらいのスージグァは、人との距離を緩やかに縮めてくれる。坂の上へと続く階段横には小川が流れていて、周辺にはわき水が出ているカー(泉)が多い。この辺一帯は昔から水が豊富で、琉球王朝時代から紅型工房が軒を連ねているという。紅型(びんがた)とは、沖縄を代表する伝統的な染色のひとつで、首里は紅型発祥の地と言われている。

 額にうっすらと汗をかき、なんとか階段を上りきると八百屋はもう目の前だ。ふと振り返ると夏至の長い夕日が眼下の市街地にまっすぐに差し込んでいる。

 

〜こよみ散歩の小径(こみち)みやげ〜

夏至のころ、沖縄では慰霊の日を向かえる。その日没の時間帯、屋上の階段にまっすぐに差し込む夕日を見ることができる美術館。さらに階段を上ると眼下に広がる光景とは。

◇佐喜眞美術館 http://sakima.jp

長尾紀壽展 「型染 祀りから沖縄へ」

2011年
6月29日(水)~8月8日(月)


立冬と森のようちえん

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今年の「立冬」は11月7日。太陰暦で季節を現す二十四節気の一つで、この日から立春までが冬と言われている。

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今日の場所は、私の故郷である新潟県上越市。この時期、遠くの山では山頂が霜でうっすらと白く覆われ、郷では冷たい雨が降ったり止んだりと安定しない天気が続く。少しずつ近づいてくる雪の気配に、冬支度に追われる忙しい季節でもある。

「お魚さん、みつけた。」  

小川から流れて来た落ち葉が、子どもたちの想像力で忽ち魚に変身する。すると今度は木の枝が釣り竿へと変身。森の中にある全てのものが遊び道具になる。

実家から車で5分ほどの山の麓にある「森のようちえん」を初めて訪れる人は、少し驚くかもしれない。幼稚園と言ってもそこには建物も無く、森を少し切り開いた広場と豊かな山があるだけだ。子どもたちは毎日そこに集合し、そして一日を過ごす。ツンと肌を刺す今日の寒さも何のその。森で遊ぶ子どもたちは、元気いっぱいだ。

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広場にある炊事場では毎日朝から火を焚いている。寒さも厳しくなるこの時期、暖をとる為であるが、森の住人に人間がいることを知らせる為でもあると言う。

「ここには人がいますよ。郷に降りて悪さをしませんように。」

自然と人間との境界線上を踏みしめながら、子どもたちは知恵と想像力を身につけていく。

次にやって来る節気は11月22日の「小雪」。郷にも雪が降り始める頃と言われている。

 

〜こよみ散歩の小径(こみち)みやげ〜

秋から冬にかけてのこの時期、金沢の美術館でもクマが出現するらしい? ちょっと変わったそのクマとネズミが、街に繰り出し見えてくる「人間社会」の風景。

ペーター・フィッシュリ ダビット・ヴァイス


2010年9月18日(土)~12月25日(土)

http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=45&d=854

旧盆と銀天街

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那覇I.Cから北へ車で15分。沖縄南I.Cを出ると、那覇とはまた違う街の様子が見えてくる。空港通りを左折し330号線をさらに北へ5分向かうと銀天街のあるコザ十字路に到着する。戦後、人・モノが行き交う十字路で自然発生的に形成された市場が銀天街だ。

img1.jpgその市場内にある惣菜通りで楽しい会話の時間を過ごしたのは、つい先日のこと。通り沿いに置いたプランターの話や月に一度の銀天街祭りの話、店主とのおしゃべりにご近所さん達も加わる。購入した昆布の煮付けと島豆腐を手渡しながら「シチグヮチのときは、こんなにゆっくりできないさ。」と、また笑った。

今年のシチグヮチは、8月22日〜24日。
その時期になると昔ながらの市場や商店街は、準備の為の買い物客で活気づく。「シチグヮチ」とは沖縄の方言で旧盆(旧暦7月13日〜15日)のことを意味する。家族や親戚そして祖先が集まる沖縄の大事な年中行事の一つだ。

img2.jpg旧盆初日はウンケーといい、どの家庭でもジューシー(炊き込みご飯)を準備し祖先を迎え入れる。二日目のナカヒーでは、仏前に朝昼晩の三度の食事とおやつを準備。最終日の祖先をお送りするウークイは、三枚肉昆布などが入った重箱料理を用意する。
あの世の人もこの世の人も、共に「食」を囲み語り合う。時空が緩やかに交差する一時なのだ。



~こよみ散歩の小径(こみち)みやげ~

銀天街では、シチグヮチに合わせたイベントが開催される。暦と場所が合わさったちょっと不思議なスパイス。この時期、普段とは違った銀天街が味わえる。

◇コザクロッシング2010 土着現代アートフェスティバル
2010年8月16日(月)~8月29日(日)
http://aaf.gintengai.net/

プロフィール

阪田清子(さかたきよこ)
1972年新潟県生まれ。1995年に沖縄へ移住。現代美術家。 暦を通じて日々の生活の中で出会う「人・場所・モノ」を緩やかに繋げて紹介していきたいと思っております。